アンケートは、顧客や利用者の意見を短時間で集められる便利な手段です。数値や選択肢の集計によって全体の傾向を把握できるため、多くの企業や組織で活用されています。
しかし、その数字や回答だけを頼りにすると、実際の“本音”や背景を見落としてしまう危険があります。
1. 質問設計が結果を左右する
アンケートは、作成者の設計意図によって大きく結果が変わります。
たとえば「満足」「不満足」など二択しか用意していなければ、どちらにも当てはまらない人は、近い方を“仕方なく”選ぶことになります。結果として、実態とは異なる統計が出てしまうことも少なくありません。
2. 回答者にも“答え方のクセ”がある
同じ質問でも、回答者の思考パターンによって答えが異なります。
「1〜10点で評価してください」という形式でも、
- 真ん中(5点)を基準に加点していく人
- 最高点(10点)から減点していく人 では、同じ印象を持っていても数字がズレることがあります。
3. 数字に現れない“背景”
こうした設計やクセの影響により、アンケートはあくまで「限られた枠の中での答え」です。
そのため、そこに現れない背景や感情は、数字だけでは見えません。
4. 事例:ある飲食チェーンでの発見
ある飲食チェーンでは、アンケート結果だけを見て店舗改善を行っていました。
「料理が冷めていた」という意見が多数寄せられたため、提供時間を短縮する施策を実施。しかし、数カ月後の売上は思うように回復しませんでした。
そこで、実際に顧客インタビューと行動観察を行ったところ、真の不満は“料理の温度”ではなく、“店員が慌ただしく余裕がない接客”にあったことが判明したのです。
つまり、アンケートの数値だけでは、本当の原因が見抜けなかったわけです。
5. 本音を引き出すために
アンケートは有効なツールですが、万能ではありません。数字だけでは見えない“本音の体験”をつかむには、以下のような手法を組み合わせることが効果的です。
- 自由記述欄を充実させる
- 雑談やインタビューで深掘りする
- 行動観察で無意識の反応を捉える
まとめ
アンケートはあくまで「入り口」にすぎません。そこから一歩踏み込み、自由度の高い会話や観察を通じて、数字の裏側に隠れたストーリーを拾い上げることこそ、本当の顧客理解につながります。
コメント